SEO会社と契約する前には、自社が依頼したい業務と提案書・見積書・契約書を照合し、作業範囲、費用、責任分担、権限、成果物の利用条件、更新・解約、終了時の引き継ぎを確認します。
「内部対策一式」など、具体的な内容が読み取れない記載は、作業と担当を分けて説明を求めましょう。回答を得た後は、合意した内容がどの文書に残るかまで確かめます。
まず依頼条件を整理し、候補会社の提案と文書を照合してから、追加質問と合意内容の書面への反映へ進む方法を提案します。
まず、自社が依頼したい業務を整理する
提案書を読む前に、自社の依頼条件を短いメモにまとめておくと、希望する支援が含まれているかを照合できます。次の内容から整理してみましょう。
- 依頼の目的:商品ページからの問い合わせにつなげたいなど、何のために改善するのか
- 対象:依頼するサイトやページ、対象外にする範囲
- 予算上の制約:社内で承認された予算と、追加費用が生じた場合の承認方法
- 自社でできる作業:記事の作成、サイトへの実装、公開などのうち、社内で担当できる範囲
- 承認担当:改善案やサイト変更を誰が承認するのか
架空の例として、商品ページの改善案を依頼し、サイトへの反映は社内担当者が行う場合を考えます。この場合は、改善案の納品形式に加え、社内担当者が実装するときの質問に対応してもらえるかが確認対象になります。
回答を整理するには、以下のような確認表を使えます。記入例は架空のものです。
| 自社の依頼条件 | 候補会社の回答 | 記載文書と箇所 | 追加確認 | 合意内容 |
|---|---|---|---|---|
| 改善案を受け取り、自社で実装する | 実装時の質問にも対応可能 | 提案書には記載なし | 対応範囲と追加費用 | 回答後に記入 |
回答を聞いたことと、文書に記載されたことは分けて記録します。合意前の項目は空欄にせず、「未回答」「条件を相談中」など、残っている作業が分かるようにしておきましょう。
Googleは、SEO会社への質問例として、期待する結果と時期、測定方法、連絡方法、サイトの変更内容と理由の説明などを挙げています。依頼メモや確認表は、こうした質問を自社の文書確認に使うための本記事の提案です。
作業範囲・成果物・費用・報告を文書と照合する
依頼条件を整理したら、提案書・見積書・契約書を並べて読みます。作業名だけで判断せず、何を納品し、誰がサイトへ反映するのかまで確かめましょう。
| 確認する項目 | 文書で確かめる内容 |
|---|---|
| 作業範囲 | 調査、改善案の提出、実装、公開後の確認のどこまでを含むか。対象ページと対象外の業務は何か |
| 成果物と担当 | 納品形式、受け取る時期、自社とSEO会社の担当、変更前の承認方法 |
| 費用 | 見積金額に含まれる作業、修正対応の範囲、対象追加などで追加費用が生じる条件 |
| 報告と連絡 | 測定する指標、データ元、報告時期、作業記録と変更理由の共有方法、連絡窓口 |
架空の提案書に「内部対策一式」とだけ書かれている場合、質問例は次のように目的ごとに分けられます。
- 「調査と改善案の提出に加えて、サイトへの実装も含まれますか。」
- 「対象ページと、改善案の納品形式を示してください。」
- 「追加費用が発生するのは、どのような場合ですか。」
最初の依頼メモで自社が実装すると決めていたなら、回答を踏まえて、SEO会社に依頼する支援の範囲を調整します。見積もりに実装費用が含まれている場合は、その作業が必要かも確認できます。
報告については、作業の完了と、目的に関わる指標の変化を分けて確認します。改善案を納品した記録や変更したページの一覧と、検索からの訪問数や問い合わせ数の変化は、別の情報です。何を実施したかに加え、どの指標をどのデータで測り、いつ報告するかを決めておきましょう。
Googleの質問例にも、期待する結果と時期、成果の測定方法、変更内容と理由の共有が含まれています。また、過去の作業や実績を尋ね、過去顧客にサービスの有用性や連携のしやすさ、成果を確認することも案内されています。事例を見る際は、自社と対象サイトや依頼範囲がどう違うかも尋ねると、提案を検討する材料になります。
報告時期を相談する際には、サイトを変更した日と、Google側に変更が反映される時期を区別します。Googleは、反映まで数時間から数か月かかる場合があり、変更によって必ず目に見える変化が現れるわけではないと説明しています。この時間の幅だけで、問い合わせが増える時期や契約期間を決めることはできません。実施した作業の報告と、指標の変化を検討する機会をそれぞれ確認してください。
順位保証や施策の説明は、根拠と実施内容を確かめる
支援範囲が分かったら、提案された施策の方法と根拠を確認します。以下は、それぞれの説明を受けた場合に確かめたい点です。
順位や検索への掲載を保証された場合
Googleで最上位に掲載されることは、誰にも保証できません。また、Google検索の要件と推奨事項を満たしても、ページの取得である「クロール」、検索用データへの登録である「インデックス登録」、検索結果への表示は保証されません。
保証という言葉が出たら、何を約束しているのかを確認しましょう。質問例は「保証の対象は検索順位ですか、それとも合意した作業の実施ですか。」です。成果物の納期や作業を実施する約束と、Google検索での順位を保証する説明は区別して読みます。
出典:Google「SEO業者の利用を検討する」、Google「検索の基本事項」
ツールやAI検索向けの施策を根拠にされた場合
Googleは、第三者製SEOツールを評価・推奨しておらず、これらのツールはGoogleの内部ランキングデータにアクセスできないと説明しています。「Googleが承認したツール」という説明を受けたら、その根拠を求めてください。
ツールの調査結果を見る際は、指摘された箇所と改善案のつながりを確かめます。例えば、「この指摘を受けて、どのページをどう変更する提案ですか。」と尋ねれば、ツールの数値だけでなく、実際の作業を検討できます。
AEO・GEOなどの名称で、Google検索の生成AI機能向けの施策を提案された場合も、実施内容を確認しましょう。Googleは、その助言がGoogle検索の公式ガイダンスに沿っているかを評価する観点を示しています。質問例は「この改善案は、どのGoogle公式資料の説明に基づいていますか。」です。
外部サイトからのリンク獲得を提案された場合
Googleのポリシーでは、検索ランキングの操作を主な目的とするリンクの作成や売買は、リンクスパムの対象です。一方、広告・スポンサー目的のリンクは、適切にnofollowまたはsponsoredというリンク属性を設定していれば、ポリシー違反にはなりません。これらは、リンクの扱いを検索エンジンに伝えるための属性です。
外部リンク施策の質問例は、「リンクを設置する目的と、取得方法を教えてください。」です。その回答に応じて、掲載先、費用、リンク属性の扱いを確認します。「リンクを増やす」という説明だけで、実施方法まで分かったとは扱わないようにしましょう。
権限は、依頼する作業と対象に合わせて決める
外注先に渡す権限は、必要な作業とアクセス対象に合わせて決めることを提案します。サービスごとに、閲覧するだけなのか、設定やサイトを変更するのかを整理し、付与する役割と自社の承認担当を確認してください。
Search Console:監査段階と、その後の作業を分ける
Search Consoleは、Google検索でのサイトの掲載状況などを確認するサービスです。Googleは、SEO監査の提案を検討する段階では、Search Consoleの読み取り権限のみを付与するよう案内しています。
Search Consoleには、主に次の権限があります。
- 所有者:ユーザー管理や設定を含め、対象サイトの管理単位であるプロパティを管理できます。
- フルユーザー:すべてのデータを表示でき、一部の操作もできます。
- 制限付きユーザー:ほとんどのデータを表示できます。
フルユーザーには一部の操作権限もあるため、読み取り専用とは呼べません。候補会社から求められた権限名を見て、調査に必要なアクセス範囲と合っているかを確かめましょう。
プロパティには確認済み所有者が必要で、他のユーザーへの権限付与は所有者が行います。自社側の確認済み所有者と、付与を担当する人も把握しておいてください。
出典:Google「SEO業者の利用を検討する」、Search Consoleヘルプ「所有者、ユーザー、権限の管理」
GA4:役割と、権限を付与する範囲を確認する
アクセス解析に使うGoogle アナリティクス(GA4)には、管理者、編集者、マーケティング担当者、アナリスト、閲覧者という役割があります。閲覧者も、設定やデータの表示に加え、自分が作成したデータ探索の作成・編集・削除ができます。データ探索は、データを詳しく分析するための機能です。
役割名だけでなく、付与する階層も確認しましょう。解析対象を管理する単位が「プロパティ」で、その上位にアカウントがあります。アカウント単位で役割を付与すると、配下のすべてのプロパティに同じ役割が継承されます。特定のプロパティで限定的な役割を設定しても、上位で付与された権限は弱まりません。
架空の例として、依頼対象は商品サイトだけですが、同じGA4アカウントに採用サイトのプロパティもある場合を考えます。質問例は「解析対象は商品サイトです。必要な役割を、このプロパティに限定して付与できますか。」です。あわせて、自社の管理担当者に、外注先へ既にアカウント単位の役割が付与されていないかを確認します。
出典:Google アナリティクスヘルプ「アクセス権とデータ制限の管理」、「ユーザーおよびユーザーグループの追加、編集、削除」
CMS:編集・公開・ユーザー管理を分ける
CMSは、サイトの記事やページを管理する仕組みです。SEO会社がサイトへの実装を担当するなら、利用中のCMSで、編集、公開、ユーザー管理のうち、どの操作が必要かを確かめます。公開前に自社が承認する場合は、その担当と承認方法も決めておきましょう。
Search Consoleの監査段階に関する案内を、GA4やCMSへそのまま当てはめることはできません。それぞれの役割ができる操作を、依頼内容と照合してください。
成果物の利用・再委託・更新解約・引き継ぎを確認する
契約中の作業に続いて、納品後や契約終了時の条件を読みます。以下は、自社の希望と個別契約の記載を照合するための確認項目です。
成果物をどこまで使えるか
記事、改善案、データなど、納品対象ごとに権利の帰属と利用条件を確かめます。自社で編集すること、別のページで再利用すること、別のSEO会社へ渡すことを希望するなら、それぞれの扱いを確認してください。画像など第三者の素材が含まれる場合は、その利用条件も対象です。
質問例は「契約終了後も、納品記事を自社で編集して使えますか。」です。希望する使い方を伝え、契約書や別紙のどこに条件が記載されるかを確認しましょう。
再委託がある場合の窓口と責任分担
SEO会社が業務の一部を他の会社や個人へ委託する場合は、再委託する業務、共有する情報、付与する権限を確認します。修正依頼や質問を誰が受け付け、誰が対応するのかも明らかにしておきましょう。
更新・解約の条件
契約期間、自動更新の有無、更新しない場合の通知期限と通知方法、中途解約の条件、終了時の精算や違約金の記載を読みます。
例えば、自動更新の条項があるなら、実際の契約書から通知期限と通知方法を抜き出し、社内で判断する担当と通知を行う担当を決めます。中途解約を想定する場合は、可能かどうかに加え、どの費用が発生する条件なのかを確認してください。
引き継ぐ資料とアクセスの解除
終了時には、納品済みの成果物だけでなく、作業・設定の履歴、継続中の作業も確認対象にします。引き渡す形式、担当、時期、追加費用の有無を契約前に相談しておきましょう。
質問例は「別のSEO会社へ引き継ぐ際に渡せる資料は何ですか。」です。回答を受けて、自社が必要とする資料と合っているかを判断します。
付与した権限についても、終了時に誰が、どのサービスのアクセスを解除するかを決めておきます。Search Consoleで外注先を確認済み所有者として登録した場合は、ユーザーの削除だけでなく、所有権を証明する確認トークンの扱いも確認が必要です。確認トークンとは、サイトに設置したHTMLファイルなど、所有権確認に使う情報です。
Googleの説明では、確認済み所有者を削除しても、その人の確認トークンが残っていれば、所有権を再確認してアクセスを回復できます。一方、トークンの削除が他のGoogleサービスへ影響する場合もあるため、自社の管理担当者に影響を確かめたうえで対応してください。
出典:Search Consoleヘルプ「所有者、ユーザー、権限の管理」
曖昧な点は、回答と文書への反映を分けて確認する
各項目を読んだ後は、確認表に残った事項を「未回答」「回答済みだが文書未反映」「文書反映済み」に分けます。残っている問題によって、次の行動が変わります。
未回答の項目には、具体的な作業や条件の説明を求めます。 架空の例として、提案書には「実装支援」とあり、口頭では「実装は自社で行う」と説明された場合を考えます。質問例は「提案書の『実装支援』には、どの作業が含まれますか。」です。
回答が「改善案の説明と実装時の質問対応」であれば、自社に必要な支援かを判断します。サイトへの反映まで依頼したいなら、担当範囲と見積もりの変更を相談する必要があります。
回答と文書が違う場合は、該当箇所を示して修正を依頼します。 担当範囲に合意した後の依頼例は「合意した担当範囲を、契約書または契約内容を示す別紙に反映してください。」です。修正版を受け取ったら、提案書・見積書・契約書の間で食い違いが残っていないかを読み直します。
文書に反映されていても、条件が自社の希望に合うかは別に判断します。合わない場合は、依頼範囲や条件の変更を相談し、必要に応じて別の候補会社も検討しましょう。説明がない項目を、合意済みとして扱うことは避けてください。
著作権の帰属や利用条件、中途解約、違約金などの意味・法的効力を判断できない場合は、該当条項を示して法務担当者や弁護士への相談を検討します。条項番号、分からない点、終了後も記事を編集して使いたいといった自社の希望をまとめると、相談する内容を具体化できます。
Googleも、SEO会社の説明に不明な点があれば説明を求め、どのような支援を受けるのかを把握することを案内しています。
契約の判断に進む前に、確認表から、候補会社へ追加質問する事項、文書の修正を依頼する事項、社内で判断する事項を選んでください。回答内容と書面の記載をそろえたうえで、自社が必要とする支援と条件に合っているかを判断しましょう。


